イエス様が、民の裏切り者である徴税人や、神様に従わない罪人と誰もが思うような人たちにお話しをし、事もあろうに、一緒に食事をしているのを見て、何というとんでもないことをするものかと腹を立てて、彼らは文句を言っている訳です。

　それに対してイエス様が３つの譬え話しをされました。一つは１００匹の羊の中の１匹がいなくなってしまったのを羊飼いが捜す話しですし、もう一つは大切な銀貨を見失ってしまった女性が捜して、それを見つけた話しでした。

　そして、３番目に話されたのがこの放蕩息子の話しです。この譬え話しに出て来る二人の兄弟の内、弟はとんでもない人で、父がまだ生きているのに、自分に与えられることになっている財産を分けてくれと要求するような人でした。

　しかも、寛大な父がその求めを受け入れて財産を分けてやると、直ぐにそれらの財産をお金に換えて、遠い外国に行ってしまい、そこで持っているお金を全部使い果たしてしまうまで、遊んだということで、全くとんでもない息子ということです。

　お金を全部使い果たしてしまうと、ユダヤの人たちにとっては汚れたものとして忌み嫌っている豚の世話をする仕事に着きます。けれども、贅沢に生活した彼にとってその収入はあまりに少なく、食べるのにも事欠く始末でした。

　そして、この譬え話しでは、彼は思いついてしまいます。これは、悔い改めと言える程のものではなく、自分勝手は思いから一歩も出ていない発想です。今自分はみじめなことになっている。しかし、父のところには食べ物がたくさんある。息子として帰ることは出来ないとしても、雇人の一人としてなら受け入れてもらえるのではないかということを思いつくのです。

　彼は、お父さんわたしは天に対してもお父さんに対しても罪を犯しました。もう息子と呼ばれる資格はありません。雇人の一人にしてくださいとお願いすることにして、あの父の家に戻って来るのです。

　財産を分けてもらって、しかもそれを全部使い果たして、一文無しになって、野垂れ死にしても当然の状態なのに、雇人の一人としてくださいと厚かましくも求める気になっている息子です。

　そんな息子ですが、この父は彼がまだ何も言わないうちから、息子を見つけて走り寄り、抱きしめて、息子が何と言おうと全くおかまいなしに、召使に命じて良い朊を持って来てこの子に着せるように、手には指輪をはめてやって裸足になっている足にも靴をはかせ、肥えた子牛を使って料理を作って食べさせ、お祝いしようと言うのです。

　何という親ばかな父親でしょうか。しかし、それだからこそ、この息子は助かるのですし、生き延びることが出来ることになる訳です。そして、それが、わたしたちを創造された父である神様の愛であり、心なのだということをイエス様はこの譬え話しを通してわたしたちに告げておられます。

　この息子が何かをしたというのではなく、唯々、帰って来たというだけで、この父は喜んで受け入れ、お祝いをして迎え入れているというところをわたしたちに向かってイエス様は伝えてくださっています。

　わたしたちが何かをしたとか、どうしたとかではなく、神様の元へ帰って来たというだけで、そのように喜んで迎え入れてくださる方がわたしたちの父である神様なのだとイエス様は教えてくださっています。

　そんなに神様がわたしたちのことを思ってくださっているのかと、中々信じられないわたしたちではありますが、イエス様はこの譬え話しを通して、父である神様を信じていいのですと教えてくださっています。

　これを見た兄は怒ってしまいますが、父は兄を説得し、わたしのものは全部お前のものではないか。しかし、あの弟は死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから喜び祝うのは当たり前ではないかと言っています。

　実際、その子がどんな子であったかよりも、生きて戻って来てくれたら、どんなに嬉しいかを伝えてくださっています。世の中には自分の息子を失ってしまう親が大勢います。地震や家事、交通事故、病気等々、様々なことで息子を失ってしまう悲しみはことばに言い表せない程です。

　しかし、そんな失ってしまった息子が生きて戻って来たら、もうどんな理由や何よりも嬉しいではないですか。もう死んでしまったと思っていたら、生きて戻って来た、帰って来たら、もう何の理屈もいらないのです。生きて戻って来た、帰って来ただけで嬉しいのです。

　父である神様は、わたしたちをイエス様を通して見つけてくださいました。そして、そのように喜んでくださっています。感謝して神様のみもとで、その愛に生かされて歩んでいきたいです。

　そして、そのように神様に戻って来た兄弟姉妹がいましたら、神様が喜んでくださるように、わたしたちも喜んで迎えるようにしたいものです。